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ストップオーバーの街

ストップオーバーの街

私は自分の過去の書き物を繰り返し読む方ではない。
というより、ほとんど読まない。
特に香港ライフファイル初期の記事群なんて、恥ずかしくて開きたくもない。

その時その時は真面目に書いてるつもりなんだけど、今になっていざ読みなおそうと
思って開いてみると、それとこれとは話が別ってやつである。

しかし、読者の方というのは本当にありがたいもので、そんな私の過去の記事を
いまだにきちんと読んでくださる人もいるし、一度読んだものでもまた・・・と
反芻するように楽しんでくださる方もいるようだ。

よって、今でも随分と昔に書いた記事にコメントをいただくこともあるのだが、
その時ばかりは私も自分のちょっと恥ずかしい記事も読み直さざるを得ないのである。

大体、この街自体が多くの人にとってのストップオーバーの地だ。

先日コメントをいただいた記事に私は自分でこう書いていた。
おそらく、その時は颯爽と飛んできてはしばし留まり、やがて慌ただしく去っていく、
日本人を含む外国人たちをごく当たり前に形容したつもりだったのだろう。

しかし、今またこうして読んでみると、随分と重い言葉になってしまったと思う。

好きなだけ留まってみるつもりだったのに

自分の境遇を少し話すと、私は日本企業から香港勤務を任命された駐在員ではない。
ここ香港で自分で探した欧州外資企業に勤めているという意味では、いわば現地採用である。

日系ではないのでかなり事情は変わってくると思うが、この現地採用という身分、
私は結構ポジティブな雇用形態だと受け取っている。
なんと言っても、「日本に帰って来い」と強制的に言われることがない。
自分が帰りたくなったら、帰る。私の生き方にピッタリなポジションなのである。

しかし、事情は変わってしまった。
昨今、会社には日本支社が設立され、香港で担当していたプロジェクトもそちらへ。
そして、このご時世、大変に幸せなことではあるのだけど、私も日本への移動が
期待されているという状況になってしまっている。

初めて感じた「香港をもうすぐ去ることになるかもしれない。」というこの感覚。
大袈裟に言うならば、街の景色が少し変わったようにすら見えた。
やっぱりこの街は私にとってもストップオーバーの地でしかなかったのか。

 賞味期限に気づいた時から

私は転勤族の家庭で育ったから、あんまり土地への執着というものがない。
それぞれの土地にいくらかの良い思い出はリンクされているものの、
そこにまた帰りたいな、という場所がないし、生まれ故郷も自覚できない。

そんな私が香港で過ごした時間も8年。
ひとつの街に留まった時間としては私の半生で最長のものとなってしまった。
そして、それは出来ればもう少し続いて欲しいとも切に願う。

何度も引き合いに出して申し訳ないけれど、私の大好きな王家衛の映画、
『恋する惑星』の中で金城武演じる刑事モウは

物事には全て賞味期限がある。

という風なメッセージを送り続ける。
初めて映画を見た、若き日の私はあんまりその本質を理解しなかったように
記憶しているけれど、歳をとり続けるとともに、その重みはどんどん増してくる。

自分の人生に終わりがあるのと同じように、それぞれのモノ、場所、感情にも
賞味期限があるっていうことがまさにその時が来る前に分かるようになること。
それが大人になるということでもあることでもあると思う。

「え?こんなものにお金払うの?」と思ってしまった茶餐廳の早餐。
進んでも進んでも人ばかりで全く思うように歩けない旺角の雑踏。
毎日のように降るスコールと湿気に悩まされる春。
そして、それが終わればやって来る、うだるような暑さの夏。

賞味期限がやってくると分かってしまえば、それもまた何だか思い出深くて、
愛おしいこの街の顔のひとつひとつなんだとすら感じてしまう。

悪あがきは私の十八番

そういう私のセンチメンタルな想いははけ口を求めていた。

そこでなし崩し的に生まれてしまったのが、このCha Siu Baau。

単純にみんなの香港の想いを集めて形にしたい、と思ったのも理由のひとつ。
そして、それがやがて発展して何か別のものが生み出せて、
あわよくば私がもうちょっと香港にいるべき理由になってくれれば。

あまりに個人的なことなので、表立っては話してこなかったけれど、
実はそういう想いがこめられたとても意味あるサイトなのである。
だからこそ、私はこのCha Siu Baauにやたら固執しているのだ。

そして、そんな私の暴走が始まってもうすぐ二ヶ月。
貴重な時間を割いて、素敵な記事を書いてくださるライターさんたちには
本当に感謝しているし、少なからず読者の方々からもポジティブな
フィードバックをいただけていることは幸せ過ぎることだとも思っている。

私もいつかこの街から飛び立つ。
これからやって来る人、もう飛び立ってしまった人だってたくさんいる。
やっぱりどうひっくり返ったってここがストップオーバーの地である宿命は
変えられないのだけど、私たちの心の中にある各々の風景と思い出は
どこにも飛んでいっちゃうことはないはずである。

だから、そんな想いが自然にここに集まってきて、ヴィクトリア・ハーバーの
夜景みたいにいろんな色の輝きを放ってくれるように。
そして、みんなで星光大道の道端に腰掛けて、しばし眺めては楽しむ。
これこそ当店名物、絶品Cha Siu Baauの正しい味わい方なのである。

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この記事を書いたライターさん : HKLF

HKLF
Cha Siu Baau編集係。偏見に満ちた愛と独断で香港をぶった切る異色ウェブサイト「香港ライフファイル」著者でもあったりします。

6 コメント

  1. HKLF様。すごく感慨深く、記事拝見いたしました。なんか、、すごくカッコいいですHKLFさん!^^ 私も同じく現地採用ですので、期限があるわけではないのですが、、本当に期限がないのか?或いはあるのか、、。自分で気づきたくないだけなのかもしれません。。でもまだいましばらくは、香港で悪あがきをしてみよう、と思っています。この香港で得た自分の経験や思い、風景は、まだまだ生々しく、私の中にあって、これからも私に何かを与えてくれそうな気がしてますので・・・。

    • HKLF

      もくもくさん、こんばんは。
      私とちょっと境遇が似ているからこそ、共感いただいたのかもしれませんね。
      まだ香港に居続けることを選ぶ権利があるのならば、それはとても幸せなことです。
      賞味期限が来るまで日々精一杯この街を楽しむっていう贅沢を許されてるのですから。

  2. はじめまして★
    香港が好きで毎年行くのが恒例でしたが、ここ数年行けてません
    が、香港に関するブログを読み漁ってたところ、HKLFさんのブログとこちらのサイトに辿り着きました
    いつも女性が書いたブログを読むことが多いので、男性目線の香港生活の内容が新鮮でした
    今回の記事を読んで、何だかとても感慨深くなってしまったので、こうしてコメント書かせてもらいました
    これからも、楽しみにしています!

    • HKLF

      ゆっきぃさん、はじめまして。
      仰るとおり、素敵で垢抜けたサイトが多い香港ウェブ事情の中にあって、
      ここはやたらコッテリしてまして・・・。なんか申し訳ないくらいです。
      お忙しいのだと思いますが、ぜひ香港にまたいらっしゃってください。
      私もゆっきぃさんの見た香港をお話して欲しいと思っています!

  3. はじめまして。
    いつも楽しく読ませて頂いています。
    在港3年目になりますが、帰国も在港数も決まっておらず…まさにこの記事のように、心の片隅にはいつもストップオーバーの意識を抱えながら、必死に香港生活にしがみついています。

    『物事には全て、賞味期限がある』

    …心に響きました!

    賞味期限があるからこそ、今を楽しむのか。
    賞味期限があると諦めて、なんとなく投げやりにその時を迎えるのか。

    どうせなら、とことん今の生活を満喫してやり遂げてやろう!と決意できました。
    後悔しない生活を送りたいと思いました。

    いつも香港の、香港人の深い所まで教えて下さって、香港生活にとても参考になります。
    ありがとうございます!
    またの更新楽しみにしています。

    • HKLF

      ココさん、はじめまして。
      実は私のほうが読者の方から教えていただくことが多いですが、いつも読んでくださってありがとうございます。

      香港はとっても楽しい街なのですが、やっぱりそこにいられる時間も無限ではありません。
      今の一国二制度という都市自体のタイムリミットだってあります。
      そういう意味では他の場所より賞味期限の姿はハッキリと見えやすい環境でもあるわけです。
      だからこそ、しっかり香港を楽しむべきであって、後悔なく飛んでいけるようにしたいものですね。

      今後ともぜひよろしくお願い致します。

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