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香港映画のお仕事~声優編

最近は韓流にはじまり、大陸映画や台湾映画、さらにはジブリもの、
ドラえもんシリーズなどの前に存在感が薄れてしまったような香港映画ですが、
私が居住を始めた1990年代半ばあたりまでは、まだまだ映画館の数も多く、
毎週のように新しい香港映画が封切られていました。

あるものはロングランヒットを達成し、あるものは数日で上映打ち切り、
必ずしも名監督や名優の作品だからヒットするってわけでもなく、
なかなかここの興行の世界はシビアだなと感心したものです。

ある日のこと。
当時の小生の勤務先は、なにやら怪しい人がやたら出入りしている
怪しい会社でして(笑)。あ、一応、名の通った日系会社で社員もその商売の性質上、
8割近くが日本人だったんですが、みんな怪しげな人でした(笑)。

で、社に出入りしていた比較的怪しくない日本人の一人から、
「だれか今度の日曜日に、ジャッキー・チェンの新作の声の吹き込みに行ける人いますか?」
とのお誘い。

「え!ジャッキー・チェンも一緒ですか???」

色めき立つ社内。

「そんなバカな話ないでしょうwww。みなさんは映画の中で大勢の
日本人観客の『わ~わ~』とかの歓声役です」

しょんぼりする日本人各位。ただ、聞くとギャラはその場でキャッシュで支払い、
広東語一切不要、拘束時間も3時間前後だろうという。
香港に来てまだ数週間しか経過してなかった私は、物珍しさも手伝って
「それ、行きます、行きます!」
というわけで、社内の日本人数名が立候補したのでありました。

さあ当日。
我々が向かったのは、九龍側は太子。古ぼけたビルの階段を上がって行きます。
「なんか秘密結社へ行くみたいですね~」
一同、わくわくどきどき。

迎えてくれたのは、まさに「秘密結社」にふさわしいおじいさん数名。
おじいさん、と言いながらも、香港の映画業界でもう何十年も生きて来ているのが
見てすぐわかる、なかなか味わい深い風情の方たち。

なんと表現するか…。そう、『Mr.Boo!』に登場するちょっと間抜けな盗賊の親分を
演じたときの石堅(シー・キエン)を二回りくらい縮めたような(笑)。
ペロンペロンな生地のガラガラヘビのような模様の開襟シャツに、時代物のグラサン…。
もうこの風情にはねえ…。やけにときめきましたよ(笑)。
「おお!香港映画の世界だ!」って(笑)。

『Mr.Boo!』の石堅。この風体を二回りくらい縮め、シャツのガラガラヘビ度合いがもっと凄まじいおっちゃんたちが目の前に!(2009年6月5日付『蘋果日報』)

『Mr.Boo!』の石堅。この風体を二回りくらい縮め、シャツのガラガラヘビ度合いがもっと凄まじいおっちゃんたちが目の前に!(2009年6月5日付『蘋果日報』)

でもやっぱり石堅とくれば、『燃えよドラゴン』のこの格闘シーンが我々世代には印象深い。もともとは武侠もの映画の大スターにして武術家だから、こういうシーンはお手の物だったというわけ(「时光网」)

でもやっぱり石堅とくれば、『燃えよドラゴン』のこの格闘シーンが我々世代には印象深い。もともとは武侠もの映画の大スターにして武術家だから、こういうシーンはお手の物だったというわけ(「时光网」)

で、お仕事の方はというと、これは全く難しくなく、ジャッキーの映画に日本のシーンや
日本人が大勢映るシーンがあるので、お前さんたちはその映像を観て
どんな声を出せばいいか考えて、こっちの合図に合わせてその声を出せ、という内容。

パチンコ屋のシーン、喧嘩のシーン、サーキット場の観客の歓声などなど。
映画好きな人なら、「ああ、あの映画か!」と気づいたかも。
『デッドヒート(原題=霹靂火)』です。ジャッキーのほかに有名どころでは、
加山雄三が出てましたね(これがまたクサイ演技でww)。

Leslie3

「でもこれ、どんなに頑張っても所詮5人の声だし、どうすんのかね?」
って疑問もありました。

でも、堅叔(あ、石堅のことをこう呼ぶみたいです、香港では)たちはグラサンの奥に
不敵な笑みを浮かべ、「OKら~」を連発するばかりで、ダメ出しらしきものはほとんどなく、
朝10時ごろから始まった吹き込みは13時ごろには完了しました。
おかげで劇場公開前、それもまだ未完成のジャッキーの新作をたっぷり観ることができました。
(それほど感動的な作品ではありませんがねw)

香港公開がその年の8月。
さっそく映画館へ行きまして、自分たちの声入れしたシーンを待ちますと…。
これがびっくり。たった5人で「わーわー」ってひたすら声を上げていた、
かつての仙台ハイランドのサーキットコースでのシーンが、まるで5万人の大観衆の歓声で
沸きかえっているようじゃないですか!

5人で声を合わせた「ジャッキーコール」もスタンドを埋め尽くす大観衆の、
それこそ甲子園の「掛布コール」(笑)のように聞えるんですよ。
パチンコ屋やサウナでの喧嘩のシーンも、すごい臨場感たっぷりで、
「あの堅叔たち、タダものじゃないね~」とか感心したりと(笑)。

5人の声を重ねていってこんな風に仕上げたんだな~、
なるほど、映画ってこうやって作っていくんだ~、ってのがよくわかる、大変貴重な経験でした。
何よりも、声だけとはいえ、ジャッキー・チェンの最新作のほんのわずかではあっても
その一翼を担ったってのは、やっぱり気分がいいですよね。
日本の友人知人家族親族には思いっきり自慢したし、今なおこうして自慢できますし(笑)。
ま、お暇があればDVDでも観てください。
北角あたりのDVD屋で安く買えるんじゃないですかね。

あ、ギャラの方ですが。
まあ300ドルももらえたら充分だなと思ってたら、たしか交通費込みで500ドルもらえたと
記憶しています。こりゃいいお仕事です。
さすが天下のゴールデンハーベストです、羽振りがよろしい。
「またよろしく~!」ってウキウキと引き上げましたが、以降、声のお仕事は来ませんでした。
ただその数年後、こんどは出演のお仕事が…。
これはまた別の機会に(笑)。

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この記事を書いたライターさん : Leslie

Leslie
返還をはさんで15年の在住歴あり。ちなみに私の名前Leslieは、張國榮のことではなく、BCRのレスリー・マッコーエンのことです(笑)。

3 コメント

  1. すごい!僕も実は・・・上海駐在時代にエキストラ募集でフジテレビの開局50周年ドラマに出ました。長澤まさみ、柴咲コウ、松本潤、佐藤隆太、大泉洋と14時間一緒でしたよ!ギャラゼロ、飯は三食出ましたが・・・。ちゃんと映っててうれしかったです。コスト削減で日本のドラマ、しかも福岡の戦後のシーンを上海でロケしてましたねえ。

  2. 海外駐在していると、日本人自体が少ないので結構「借りだされ」ますよね。インドとかでも天皇陛下訪印でデリー空港への日の丸の旗振りで招集がかかりました・・・・

    • BOJOさま

      コメントありがとうございます。
      その上海のご経験はうらやましい。でも、ギャラ無しなんですね(笑)。

      そうですね、いろいろと借り出されますね。まだ香港は日本人が多い方なので、確率は低いかもわかりませんが…。
      いずれにしろ、日本にいては経験できないことを多くさせてもらえるのは、うれしいことではあります。逆に、日本におれば経験しなくて済むこともありますが…。SARSとか反日デモとか…。「それもこれも」の海外生活です。

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