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日本人が水を差してみる水貨客問題

日本人が水を差してみる水貨客問題

3月18日欧州時間12:00。
私を忙殺し続けたプロジェクトがようやくローンチ。
ひとまず仕事の方も近々のピークを越したと言える。

準備期間はまさに仕事一色といった感じで、テレビや新聞に目をやることも
ままならなかったのだが、朝はひとまず香港早晨をつけておいて
周嘉儀にしばし癒やされることを細やかなモチベーションとして頑張っていたものだ。

時事、株価、天気。
そんなものはどうでも良かったのだが、月曜日になると決まって
あら、これ香港なの?とビックリしてしまうような穏やかでない映像が流れていて、
それだけはちょっと気になってしまった。


日本では報道されているのか知らないが、中国本土とのボーダー付近で頻発する
水貨客問題ってヤツである。まったくもって今に始まったことではないのだが、
現場は日に日にヒートアップしている模様で、傍から見ているこちらも心中穏やかでない。

よって、今回はこの問題について少し書いてみる。
はじめに断っておくけれど、私はこの問題について特段詳しい方でもないし、
最近のニュースも追えていないから、全て私の私見に基づくものだから悪しからず。

水貨客問題とは?

まず水貨客問題とは何ぞや。というところから話を始めたいと思うけれど、
根幹的な事実をザックリ乱暴に書いてみると、大量の本土人が香港に押し寄せて、
安全かつ安価な商品をお土産とは思えないスケールで買い占めて帰ってしまうことである。
というか、それ目的だけで香港にやってくる、いわば業者が存在している。
それに対して、香港人の一部が異常な剣幕で反発しているのだ。

ただ、この行為だけ取ってみれば、本土人たちだって決められたルールとプロセスに
したがって越境して来て、買い物して帰っていくだけなのだから、
警察が動くような話でもないし、むしろお金を落としていってくれる
という意味においては香港にとっておおよそポジティブな経済活動である。

消費者としても、よりコストがかからなくて、かつ安全が確認できる場所から
調達されたアイテムを偏好するのは当然の行動パターンであるし、
店舗側もそれを自由経済で発達してきた競争原理として受け入れるべきであろう。
どうせ不満が出るのであれば、本土側の店舗たちから聞かれるべきであって、
香港側からというのはどうにも筋違いなような気がしないでもない。

しかし、おそらく問題はそういう表面化している部分だけでなくて、
もっと根深い部分に香港市民の神経を逆撫でるような原因があるのではないだろうか、
という部分についてもうちょっと見てみる。

私が思う水貨客が香港人にとって問題である理由 その1

これは直接的に市民の生活にインパクトを与える事実だと考えられるが、
日常品の高騰、もしくは在庫の不足。

そもそも本土人が香港にやって来て大量に買い物をして帰る、という活動が始まったのは
この水貨客問題が勃発する遥か前である。

たとえば、「金勞」。金色のロレックスの総称。(主にデイトジャストだと思われる)
成金趣味の本土人たちにとって、長らくステータスの象徴だったアイテムだが、
きちんと本物だという確証が得られる、そしてマネーロンダリングの一環としても
機能することから、香港のブティックたちは彼らの支持を集め続けた。

他にも中環や広東道の高級ブランドの前では長蛇の列もよく見られた。
これには香港人たちは皮肉は口にするものの、明らかな反対の意は示さなかったと思う。
金にうるさい香港人たちだから、彼らが落とす金の意味も分かっていたのだろう。

しかし、時代は変わり、本土からの観光客のコア層は
以前のような金持ち、成金ではなく、より緩やかなビザ審査基準により
越境してくる一般的な本土人たちに移る。

この随分と俗っぽい新しいお客たちの買い物リストを見て、香港人たちは驚くことになる。
彼らはおおよそ高級ブティックを訪れるような時間をスケジュールに入れていないし、
薬局、化粧品、食料品。彼らが購入するのはどれも安価で、
かつ香港市民が日常的に購入するものばかり。
ここで初めて、本土人と香港人が消費者として同じ土俵に立ってしまった。

今でこそ持ち出しに制限がかかるようになったが、粉ミルクなんかは記憶に新しい。
本土で買う粉ミルクを飲むと頭が爆発するとかで、(すごい話だが)パニックに陥った
本土人ママとその家族たちは手分けして香港の安全な粉ミルクを買い占め。
結果、地元香港のママたちは品不足と価格高騰に悩まされることになった。

今日、本土人たちが水貨として持ち帰る品のバリエーションも多岐に渡るが、
多量な持ち出しがあれば、粉ミルクのように香港庶民の生活に関わってくるものが多い。
そういう意味で、必要に迫られて水貨客を糾弾しているという事実は理解もし易い。

ただ、繰り返すが各パーティーが合法的な範囲で自然な市場原理に基づいて
経済活動を行っている以上、ここで庶民を救えるのは政府の取り決めだけなのである。
そして、香港の観光業界、小売業界にとっては今までもこれからも本土客の落とす金が
彼らの美味い食い扶持である中、財政界が庶民層へ大幅の歩み寄りをすることは考えにくい。
社会は常に金を集めるものたちが既得権益を維持するべく動かしていくものなのである。

私が思う水貨客が香港人にとって問題である理由 その2

2つ目はもうちょっと心理的なものになる。
ただ漠然と、香港と自分の将来に不安と不満がいっぱいで、
その気持ちのはけ口を探していたところに水貨客が視界に入ったから。

水貨客が集まる場所なんて、本当に近寄りたくもないし、間違いなく香港にいるはずなのに
そこだけどういうわけだか、中国本土かのような空気が漂ってしまっている。
そんなものを自宅近辺で繰り広げられてしまったら、たまったものではないだろう。

しかし、問題はもっと根深いところにあるような気がする。
あれだけ騒がれて始まった雨傘革命も完全黙殺で幕を閉じた今、
香港の若者たちは自分たちの考えるよりも早いペースで進んでいく香港の本土化に
焦り、怒り、不安を感じているのに違いないと思う。

自分たちが生まれ育った街が忌み嫌う連中によってどんどん変えられているのに
頼みの綱の香港政府は、そんな連中の親玉のご機嫌をとることばかり。
これから香港はどうなるのか。自分たちは将来は?今、何が出来るのか。
そういういろんな気持ちがたまたま水貨客っていうポイントで爆発しただけ。

したがって、例えこの問題が平和裏に解決したって、香港の若者たちの不安を
軽減してやらない限りは結局のところ別の問題に彼らを走らせるだけなんじゃなかろうか。
水貨客が問題なのではなくて、香港のあり方、将来が本当の問題なのである。
いくら若者と言ったって、そのくらいのことは心のどこかで
多少なりとも分かってる中で水貨客排斥に参加しているように思われてならない。

雨傘革命と一緒にしない

ここでひとつ注意したいのは若者中心のこの動きを雨傘革命と一緒くたにしないことだ。
おそらく彼らを動かす熱いエネルギーは元を辿っていけば似たようなところに
原点を見つけることができるような気がするが、アウトプットの仕方は全く別である。
(おそらく主導している組織も違うのだと思われる)

水貨客排斥に参加する若者の気持ちは分からないことはないが、
やはり何度考えても本土人たちは現状の法に触れない形で活動している限り、
暴力的な行為に出たとしても香港にとっては短期的にも長期的にもメリットはなかろう。
逆にそんな活動をする自分たちが犯罪者になってしまう。

よって、個人的にもこの水貨客排斥については好印象を持っていない。

すでに今回の一連の行動で本土人たちの足が香港から遠ざかりつつある。
一昔ならば、彼らはそれでも香港に通い続けたかもしれない。
しかし、今は環境が違う。香港が来るなというならば、他へ行ける条件が整いつつある。
今やチャイナマネーは世界各国が手招きして迎え入れる巨大市場である。

このまま本土人が来なくなってしまえば良い。
そうすれば香港は行儀の良い香港市民だけが暮らす明るく楽しい街になる。
なんておめでたい話は残念ながら現実になりそうにない。

結局、金なのである。
今、これだけ香港の経済が潤っているからこそ、共産党も迂闊に手出しできない、
と考える方が自然であって、金を集めてこない香港なんてただの漁村。
ラマ島の火力発電所は実は核兵器基地でした、えへへ。なんてことでもない限り、
いよいよ香港市民に発言力なんて無いであろう。

とは言うものの。
じゃあ、このまま大人しく金を生み続ける都市であり続けたところで将来は?
普通選挙はどうなるのさ?なんて聞かれると答えに困るけれど。
そこら辺が香港の政治システム的ジレンマなのであり、だからこそ若者は
葛藤した上に目先のものに感情をブツケているのが現状。

そんな彼らのボスである香港政府は依然として共産党の方ばかり見ていて、
香港市民との間のミドルマンとしての活躍は未だ見られない。
そういう香港の実情を考えていると、なかなか胸が痛くなる問題だったりもするのだけど。

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この記事を書いたライターさん : HKLF

HKLF
Cha Siu Baau編集係。偏見に満ちた愛と独断で香港をぶった切る異色ウェブサイト「香港ライフファイル」著者でもあったりします。

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