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予定調和な起業精神

予定調和な起業精神

先日、うちのすぐ近くに甜品屋がオープンした。
無類の甘党である私にとっては何事にもかけがたい朗報であったにも関わらず、
店はしばらく閑古鳥が盛大に鳴く日々を過ごした後、
近隣住民に特に惜しまれることもなく結束営業という運びとなった。

オーナーは私より少し若いくらいの夫婦だったのだが、
奥さんの方がいかにも幸薄そうな面持ちをした人だったので
私はひとり同情の目を向けつつ、彼らの輝かしい将来を心のなかで願った。
(最後の方は私も頑張って通うという「お気に入りの店は俺が守る」活動を
展開したのだが、そのくらいじゃどうにもならないくらい、
彼らは圧倒的に顧客の数が不足していた)

しばらくすると、甜品屋があった場所で何やら別の店らしき改装が始まった。
完成するまではいったい何の店が出来上がるのか、私も興味津々だったのだが
ようやく店もオープン間近というところになって、
その店が雑貨屋になろうとしていることが分かった。

雑貨屋といっても、オシャレな家具や小物を売ってる類のものではない。
卵や飲料品に缶詰、トイレットペーパーや洗剤といった日常雑貨を
扱うような類の店である。別に業種としては問題ないだろうし、
ここらには一定の需要もあるように思えるのではあるが、
私も含めてその店になろうとしている建物の前を行き交う人たちには共通の疑問があった。

すぐ隣にセブンイレブンがあるのに?

しかも、雑貨屋の営業時間は随分と強気の11:00-19:00。
そして、もっと驚くことに店のオーナーはあの流行らない甜品屋を
営んでいた夫婦であった。私にはイヤな予感しかしなかった。

間もなく、私の当たって欲しくなかった予感は現実のものとなり、
「室内電気設備の不良により」という張り紙がされた店は二度と開かれることがなく、
あの成功者の香りがまったくしない夫婦を見かけることもなくなった。

残念だけど、雑貨屋の失敗についてはどう贔屓目に見ても同情の余地は無かったから
私の心が痛むというようなことも特になく、この街ではよく起こりうる何でもない
出来事として誰の中でもそういう風に処理された。

しかし、香港人のこの勇敢過ぎる起業精神には理解に苦しむ。
ちょっと考えれば(というか、基礎的なマーケティング的考察をすれば)、
成功の可能性がほぼ皆無という状況でもお構いなしに店を開く。
そして、予定調和を見るがごとく闇へと消えていくのである。

日本だったら、5年経とうが10年経とうが、頭のなかの記憶をたどっていけば
あるべき場所に目当ての店を見だすことができるが、香港は違う。
狂気的な家賃、常軌を逸した業務転換、そしてアグレッシブ過ぎる起業精神。
それらの事情がいろいろ相まって、今日ある店が一ヶ月後にある事自体を
ありがたがらなければならない状況が生まれている。

であるから、私の場合、(というか、ほとんどの日本人もそうだと思うが)
開業以来◯◯年的なフレーズには絶大な信頼を置いているのだけど
そういう重要な指標を失ってしまうし、情報をすすんで取っていかないような
人間だから、世間からはどんどん置いてきぼりをくらうことになるわけで、
お気に入りレストランリストがなんとも寂しい状況になってしまうのである。

今日もどこかで明るく元気に店が開き、一方で多くの店が淘汰されたはずだ。
「やってみてから考えよう。」
そういう精神のもと、この街の鼓動は止まることはない。

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この記事を書いたライターさん : HKLF

HKLF
Cha Siu Baau編集係。偏見に満ちた愛と独断で香港をぶった切る異色ウェブサイト「香港ライフファイル」著者でもあったりします。

2 コメント

  1. ルシャベール佳恵

    分かります。
    悲しいかな、HKLF さんにお勧めした モロッコレストラン、Kasbah も、いつの間にかトルコ料理レストランに代わっていました…

    香港を出て5年、そのまま残っているお店もレストランもほぼ皆無。毎回凹みます。

    仕方無いと言えば仕方無いですが、個性ある小さなお店やレストランがLV やCHANEL 等のビッグネームに取って代わってしまうのは悲しいです。だって大陸の人達が好みそうなお店ばかりが成功してて。

    本当に賞味期限の短い街ですね、香港….

    • HKLF

      香港に住んでいる私でさえ、戸惑うことが多い移り変わりの速さですから、ルシャベールさんにとってはもっとサプライズの連続ですよね。
      お金に敏感な街なのでメジャープレーヤー(今は大陸人・・・)にある程度迎合した街並みになってしまうのは仕方ないことですが、分かっていてもちょっと寂しいことも。
      でも、そういうマンネリ化の無い街ということでポジティブに考えていくことも必要かなっと最近は考えるようにしています。

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